1.宗教2世
わたしは世間で言うところの『宗教2世』。
生まれたときから週3回の集会、日々の伝道に連れまわされるこども時代を過ごした。宗教にのめりこんだ妻とこどもを捨てて、養育費も払うことなく父親はさっさと消えた。風呂無しボットン便所の、ジメジメと畳が湿るボロアパートで小学生時代を過ごした。
ここ最近になって宗教2世問題が明るみに出た際、体罰について目にした方々も多いと思う。
『懲らしめの鞭』という「叩いてもこどもは親が好きだから絶対離れていかない。こどものために、愛を持って思いっきりこどもを叩きなさい。とにかく親に従順にさせなさい。滅びの日が来たときにちゃんとこどもが着いてくるように。」そんな協会(誤字ではない)の教えに従い母親たちは小さなこどもを鞭棒で叩きまくった。
我が家で使用されていた鞭は、二層式洗濯機に使う青いゴムホースや、ストーブに使うオレンジのゴムホースで、これらを60cmくらいに切って半分に折り、端をぐるぐるガムテープで留めたもの。(ものさしや、布団叩きのこともあったけれど、ホースがわたしは一番こわかった。)
振り下ろすたびに風を切る寒い音がして、おしりは声にならないくらい痛い。泣くと10回増えるので、口をおさえて早く時間が過ぎるように、早くおしりの感覚が麻痺するように必死で耐えるしかなかった。100回の日もよくあった。
「一回でハイと返事をしなかった」「先生にちゃんと証言(後述)できなかった」「学校で友人をつくって一緒に帰った」「集会中に居眠りをした」そういうことに対してペナルティとして鞭をよくされた。
外で誰かといるときは、相手に気づかれないように笑顔で母はわたしに1本指を立てて見せてきた。指1本は「鞭10回」のことで、指が増えるたび家に帰りたくなくて地球から消えてしまいたかった。おしりはいつもアザだらけで、週に一度行く銭湯のときに母から「みんなに見えないようにおしりを隠して歩きなさい」と言われており、そのことについておかしいとは思わなかった。
「お母さんがいつもこわい顔なのはわたしが悪い子だからだ。わたしを育てるのに苦労しているからだ。どうしようどうしよう。」ということを常に考えていなければならなかった。“いいこになりたい”という署名を書かさせられて、何か母の気に食わないことがあったときには、それを見せられ罰として叩かれた。
こどもは本来お母さんが好きだし、本能的に生きるために縋るものだと思う。「お母さんが笑ってくれたら」と思って頑張ったのに無駄だったあらゆることを思い出すたびに健気すぎる自分に腹が立つ。
鞭に関しては、高校1年生の頃まで続いた。
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