4.好きなことは「現実逃避」

4.好きなことは「現実逃避」

だいきらいな学校だったけれど、わたしは唯一図書室が大好きだった。誰も来なくて静かでやさしくカビくさく、床に座り込んで本を開くとあっという間に違う世界に飛んでいけて、ずっとその世界にいたかった。放課後は追い出されるまで図書室で本を読み、読みながら帰った。毎日借りて毎日返しにいった。本の世界に思いを馳せ、頭の中でボロアパートを飛び出して白馬に乗って夜空を走り回り朝方までにふとんの中に帰ってきた。
わたしは本を読むのと同じくらい、絵を描くことが好きだった。頭の中で映像になった、本の中の色や形やにおい、生き物、それらを紙に描いてみることが大好きだった。捨てる前のカレンダーの裏や、チラシの裏の真っ白な面を見ると、何を描こうかワクワクした。
母からは絵のチェックも入るので、突っ込まれて答えられないようなもの(例えば”お化け”や”動物の全身に性器も描く”などはアウト→鞭)は、母の目が届くものには描かないようにしていた。母から絵について褒められたことはなく、ここがヘンというダメ出しをよくされた。人の顔を描いたら「耳の位置がおかしい」ということで何度も泣きながら描き直しをさせられたこともあった。絵を描くことが嫌いにならなくて良かったと思う。
(余談だが、わたしの人生にほとんど登場しなかった父。父も絵を描くことが好きな人だったようで、本当は漫画家になりたかったらしいが、結局はフリーのデザイナーとして生きている。わたしは父の描いた絵は見たことがないが、母曰くわたしの描くものや雰囲気がよく似ているらしく気持ち悪いとのこと。)
小学校のころの「夢」の欄は”本を書く人か絵を描く人”と書いていた。

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