6.初めてのタトゥー

6.初めてのタトゥー

持ち込みのデザインを受け入れてくれるタトゥースタジオをインターネットで探した。あるタトゥースタジオのホームページを見ていて、彫師の方のプロフィール文中に手塚治虫の「火の鳥」について記されていたことで、わたしはそのタトゥースタジオで人生初のタトゥーを彫っていただくことに決めた。

彫師の方は、才能にあふれ強く素敵な方だった。描いてきている数もレベルも、ただ描いている人とは違うという感じがした。
ダイナミックでもあり、繊細でもある線の強弱。こんなに美しい文様や、やさしい瞳の生き物や、憂いに満ちた表情の手や、コミカルでかわいいキャラクターを描く人。こんな人が、まさか思いもよらなったことに、わたしの絵をほめてくださった。生まれて初めて、わたしの絵にストーリーがあることを、伝えなくても解ってくださった。本当にうれしかった。「悲しい目ですね」という言葉を聞いたときに、この彫師さんの絵にもストーリーがあって、心を描いたり、絵から心が分かってしまう人なんだと思った。強い口調の中に、寂しさを知っている人のやさしさがチラチラと見えた。
わたしの太ももの上にしっかりと美しく丁寧に、人魚を刻んでくださった。
きらいだった自分の体に対して「この太ももが好き!すごく大切にしたい!」と思ったのと同時に、絵を描く人になりたかったことを強く思い出させられた。誰かの心をその人のためにもし描けるようになったら、わたしはまだ人生変われる可能性があるだろうか・・と初めて思った。

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